南インドのトリヴァンドラムと言う町の近くに、コヴァラムビーチというちょっとしたリゾートがある。
リゾートとは言ってもそこはインド。宿代も飯代も安いもので、一泊200円の宿に泊まり、150円くらいで食事をしていた。
まあ、それでも、インドの中では高い物価なのだ。
ある日、ビーチでのんびりしていると、日本人団体旅行者のおばちゃんが話し掛けてきた。
おば:日本の方なんですか?(旅が進むにつれて良く聞かれた。こちらから話し掛けているのに、信用されなかったこともある:笑)
私:ええ。
おば:どこからこられたんですか?
私:・・・・・・・。(トリヴァンドラムと答えるべきか、インドの西岸を南下してきたと言うべきか、ネパールと言うべきか・・・)
私:えーと、どこから?って言うと・・・
おば:いや、日本の。
私:東京です。(「日本の」かよっ!!)
おば:だれと来たの?
私:一人で
おば:一人!すごーい。えらぁーいわねえー!
私:・・・・・・・・・・。(一人がいいから、一人なんすけど。)
おば:どの位ですか?
私:えっと、何が?
おば:期間。
私:えーと、コヴァラムですか?
おば:ええ(当たり前じゃないという風に)
私:二週間くらいです。
おば:ながぁーーーい。(そのとき日本を発ってから既に4ヶ月が過ぎていた:笑)
きりがないので、このへんにしておく。いつものことだが、話は全く噛み合わない。
こんな会話を、しばしば旅の途中で出会った日本人団体旅行者とした。このおばちゃんは、17人で10日ほどのツアーの途中だと言っていた。
「どこから?」と言う質問は面白いなあと思った。彼女にとっては、インドは日本から空路で直接くるところなのであろう。
また、その後聞かれた、「食べ物はどう?」という質問は答えるのに困った。
我々貧乏旅人達には、ここの飯は「ちょっと高いけど、まあまあ美味いすよ」というものだったが、そんな風に答えれば、白い目で見られるに違いない。きっと、彼女にしてみれば、ここの食事は「べらぼうに安いけれど、とても口には合わない」というものなハズだからだ・・・。
「美味い日本食よりはまずいけど、インドの中ではまあまあお口に合うのではないでしょうか?」
そう答えるのが良かったかな?と後から思った。
さて、このおばちゃん。ただの旅行者と思いきや、実はなかなか不思議な人物だった。
初め、あたりさわりがなかった彼女の話題は、いつしか、イルカの超能力、人魚、UFO、エイリアン、神という超常現象的な話に進み、最後にはスプーン曲げの話にまで発展した。そして、ついにはスプーン曲げを目の前で見せてくれた。曲がったスプーンはかなり熱かった。
その後、私の誕生日を聞き、
「865で緑で虹ね」とかなんとか言い出した。「人のあいだに立つ人で、受け止める人」だそうだ。
「将来が見てみたいわ」といって、名刺をくれた。
某大手食品会社の関連会社の代表取締り役という肩書きが印刷されていた。
さて、彼女との出会いやスプーン曲げは、私の旅にもその後の人生にもなんの影響も与えなかったが、彼女からもらった、煎餅と塩昆布とインスタント味噌汁と梅干は、私に多大な影響を与えた。
それは、四ヶ月ぶりの日本の味だった。